1月4日 差額だけ払えばいい――民法・相殺の基本整理

1月4日 差額だけ払えばいい――民法・相殺の基本整理

⚖️「相殺」:債権をぶつけて消滅させる!理系の感覚に近い法律のパズル


1月10日。今日は民法の債権総論の中でも、パズルのような論理性が面白い「相殺(そうさい)」を集中的に整理しました。


相殺は、お互いに債権を持ち合っている場合に、対当額で消滅させる制度です。一見シンプルですが、「どちらが先に言い出したか」「どの債権を武器にしたか」で結論がガラリと変わるため、行政書士試験でも事例問題の宝庫となっています。今日はその「武器の扱い方」を整理しました。






1.「自働」と「受働」:どっちの矢印で攻撃するか?


相殺を理解する最大のカギは、自分の持っている債権をどう呼ぶかの区別です。ここを逆に覚えると、記述式問題などで致命的なミスに繋がります。



  • 自働債権(じどうさいけん):相殺を「仕掛ける側」が持っている債権。相手に「これをチャラにしろ!」と突きつける武器

  • 受働債権(じゅどうさいけん):相殺を「受ける側」が持っている債権。相手から「払え」と言われている弱み


「自分(自)から働(働)きかけるのが自働債権」と覚えると、図解したときの矢印の向きが迷わなくなりますね。




2.相殺適状:戦える状態かどうかのチェックリスト


相殺はいつでもできるわけではありません。互いの債権が「相殺適状(そうさいてきじょう)」という、いわば「いつでも決済できる状態」にある必要があります。


















要件 内容のポイント
① 債権の対立 二人が互いに債権を持ち合っていること。
② 有効な存在 自働債権に抗弁権(期限の猶予など)が付いていないこと。
③ 弁済期の到来 自働債権の弁済期が来ていること(受働債権は期限の利益を放棄すれば未到来でも可)。




特に、学習者が必ず引っかかるのが「時効にかかった債権」です(民法508条)。

508条のポイント:

時効によって消滅した債権でも、その消滅前に「相殺適状」にあったのであれば、相殺することができる。


「昔チャラにできたはずなのに、時効だから払えというのは不公平だ」という期待を守るルール。この「過去に遡って決済する感覚」は相殺独特で面白いですね。




3.相殺が禁止される「守られし債権」(民法509条など)


何でもかんでも相殺できると、世の中が物騒になります。例えば、殴って怪我をさせた人が「以前貸した金があるから、治療費(損害賠償)は相殺だ!」と言い出したら、被害者は救われません。



  • 不法行為による損害賠償債権(509条):悪意による不法行為や、生命・身体の侵害による損害賠償を受働債権とする相殺は禁止。

  • 差押禁止債権(510条):給料の一部など、生活に不可欠な債権を奪う相殺は不可。






💡 今日の学びのまとめ


相殺は、単なる「引き算」ではなく、債権者同士の公平と決済の簡便さを追求した、非常に合理的なシステムです。



  • 自働=攻撃、受働=防御というイメージを固定する。

  • 時効完成後の相殺は、過去の「適状」の有無をチェックする。

  • 不法行為が絡むときは、被害者の現実の救済を優先する。


矢印を引いて数字を書き込む作業は、まさにパズルを解くような快感があります。行政書士試験本番でも、複雑な事例をこの「相殺の矢印」で整理して、落ち着いて得点源にしていきたいです。


次は、相殺と並んで債権消滅の重要論点である「弁済(代位弁済)」や、紛らわしい「更改・混同」の違いを一気に整理しましょうか?